境界杭の打ち直し費用は誰が払うのか、勝手に抜かれた場合の対処法|費用相場、立ち会いの必要性も解説

草むらに設置された頭部が赤く十字の印が入ったコンクリート製境界杭

境界杭は、ご自身の財産を守るため、不動産売却時には買主に売却範囲を示すために常に設置しておくべきものです。

隣地の工事・災害などが原因で境界杭が抜けたり動いたりして、「誰が打ち直し費用を支払うのか」と疑問をお持ちの方がいらっしゃると思います。

今回は熊本県で年間4,500件以上の不動産に関するご相談を承っているすがコーポレーションが、境界杭の打ち直しに関する法律やルールを、整理してご紹介します。

境界トラブルを防いで財産を守る・不動産をスムーズに売却するために、ぜひ最後までご確認ください。

※境界杭の正式名称は「境界標」で、素材によって「境界杭(コンクリート杭・プラスチック杭)」「境界標(金属標・真鍮鋲)」「境界プレート(金属プレート)」などと呼ばれていますが、当記事では「境界杭」と表記します。

境界杭の打ち直し費用は誰が払うのか

コンクリートの目地に設置された赤線付きの金属製境界プレート

民法では、境界杭の打ち直し費用などについて、以下のように定められています。

  • 境界杭の設置・保存に関する費用:隣り合う所有者が等しい割合で負担
  • 測量の費用:隣り合う所有者が土地の広さに応じて分担

ただし、民法上の規定は「誰のせいでもなく、双方に必要な場合」を前提とした基本ルールです。

実務上は、「境界杭を打ち直す原因を作った人」「境界杭の打ち直しを必要としている人」が費用を払うのが通例です。

境界杭の打ち直しが必要となった原因打ち直し費用を誰が払うのか
隣人や工事業者が勝手に抜いた・動かした・壊した抜くなどの行為をした本人・業者
地震・豪雨などの災害で破損・移動・滅失した隣地所有者と分担(原則は等しい割合)
ご自身が撤去したご自身
もともと境界杭がない・見つからない・原則は隣地所有者と分担
・売却など一方の都合で必要になった場合は、必要とする側が全額負担するのが実務上の通例

境界杭の打ち直しが必要となった原因を明確にしたうえで、ご自身が本当に打ち直し費用を払う必要があるのかをご判断ください。

境界杭を勝手に抜かれた場合は行為者が払う

他人の境界杭を抜く・動かす・壊すなどの行為は不法行為で、行為者に対して元に戻すために必要な費用を損害として請求できます。

  • 境界杭の復元に必要な資料調査
  • 測量・隣地との立会い・杭の打ち直しにかかる費用

ただし、測量の結果として面積が変わった場合の「地積更正登記の費用」など、境界標を抜かれたこととの因果関係が薄い費用は請求できません。

境界杭が災害で破損・移動・滅失した場合は隣地所有者と折半|令和8年熊本地震の注意点

地震や豪雨などの災害が原因で境界杭が壊れた・ずれた・流された場合、行為者がいないため、杭の設置費用は隣地所有者と等しい割合、測量費用は土地の広さに応じた按分で分担します。

ただし、阪神・淡路大震災以降、法務省は「地殻変動で広範囲の地表面が水平移動した場合、土地の境界も相対的に移動したものとして扱う」としています。

※断層沿いや崖崩れで局所的に地面が動いた場所は、境界が動かない扱いです。

つまり、被災状況によっては、移動した場所にある境界がそのまま境界となる可能性があります。

また、国土地理院は2026年9月25日に座標補正パラメーターと三角点の改定成果を公表しましたが、断層の近くや地すべり・地割れなどが生じた地域では三角点の改定が済んでおらず、今後の復旧測量を待つ状況です。

そのため、令和8年に発生した地震・水害によって境界杭の打ち直しが必要な場合には、土地家屋調査士へ対応をご相談ください。

境界杭の調査や打ち直し費用についても、公費助成の対象となるケースがあります。

熊本県での不動産の売却にあたって、境界杭の打ち直しが必要でお困りの方は、すがコーポレーションへお問い合わせください。

「費用を誰が払うべきなのか」という判断や土地家屋調査士の手配なども含めて、売主さまの手間が最小限になるよう売却をサポートいたします。

ご自身で撤去した場合は自己負担

ご自身が故意に境界杭を抜く・動かす・壊すなどをした場合の打ち直し費用はご自身負担となります。

また、境界を認識できなくする行為は境界損壊罪にあたるため、「5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」「隣地への損害賠償」などを負う可能性もあります。

そのため、故意に境界杭に触ることはせず、誤って境界杭を抜く・動かすなどの状態になった場合には、隣地所有者へ連絡のうえで打ち直しの手続きをしましょう。

  • 自分で元に戻さない・打ち直さない:位置の根拠がない杭は境界の証明にならず、隣地から異議がある場合には再度測量が必要となります。抜けた杭は捨てずに保管してください。
  • 現状を撮影する:抜ける前の写真がなくても、周辺の塀・側溝・建物からの位置関係を撮影・保存しておくことで、打ち直しの手がかりになります。
  • 土地家屋調査士に打ち直しを依頼:地積測量図などの資料が残っていれば、元の位置に戻せます。

なお、「ご自身が依頼した工事業者が誤って境界杭を抜いてしまった」といった場合には、法律上は業者の責任で境界杭を打ち直すことになります。

境界杭が工事の支障になることを予測できる場合には、工事請負契約書に「境界杭を保全すること」を明記し、着工前に杭の写真を日付入りで残しておきましょう。

土地家屋調査士に、工事の影響を受けない場所(道路のコンクリートなど)に、「ここから〇メートル〇センチの場所に、本物の境界杭がある」という予備の目印をつけてもらい、工事後に復元する方法もあります。

【番外編】境界杭がもともとない場合は隣地所有者と折半が原則

「古い土地で境界杭が見つからない」といった場合には隣地所有者と共同で(費用を折半して)境界杭を設けることができます。

ただし、「土地の売却・分筆」などご自身の都合で境界杭が必要になる場合、隣地所有者には今すぐ杭を打つメリットがないため、必要とする側が全額負担するのが実務上の通例です。

こちらの記事で、土地が売れてお金が入るまでの流れをご確認いただけます。

境界杭を勝手に抜かれた場合の対処法|悪質な場合は警察への被害届も可能

地面から斜めに抜けかけている境界標と残された境界杭

「境界杭を勝手に抜かれた」と気づいたら、「誰がいつ境界杭を抜いたか」を記録しておくことが何より重要です。

流れ内容
①現状を記録・「境界杭があった場所」「周辺」を日付入りで撮影
・抜かれた境界杭が残っていれば保管
・隣地で工事があった時期なども記録
②境界杭を抜いた相手に事実を確認・工事業者が原因なら元請け会社に、隣人なら「杭がなくなっているようですが、お心当たりはありませんか」と事実確認から実施
・相手が境界杭を抜いた事実を認めた場合は、日時と内容を記録
③土地家屋調査士に境界杭の打ち直し、見積もり書作成を依頼・見積もり書は費用請求の根拠になる
・信頼関係を築くのが難しいため、費用は相手に請求するが、土地家屋調査士の選定はご自身で行うのがおすすめ
④境界杭を抜いた相手に費用を請求・見積もり書を示して支払いを求める
・相手が支払いに応じない場合は内容証明郵便で請求(専門家に依頼する場合は司法書士、行政書士、弁護士)

悪質な場合は、警察へ「境界損壊罪」の被害届を提出することも可能です。

ただし、警察へ被害届を出すのは相手を罰するための手続きで、境界杭の打ち直し費用は以下の方法で回収することになります。

方法内容と依頼先
専門家の名前で費用を請求・請求額140万円までの場合、認定司法書士が交渉まで代理可能
・行政書士に依頼できる範囲は書類作成・発送のみ
民事調停を申し立て・簡易裁判所で調停委員が間に入る話し合いで、法律知識がなくても申し立て可能
・通常2〜3回・3か月以内で調停を行い、相手が応じなければ不成立。改めて訴えを起こして裁判となる
少額訴訟・通常訴訟・60万円以下なら原則1日で判決(少額訴訟は弁護士に依頼せず使える制度)
・60万円超の場合や境界の位置自体を争う場合は弁護士へ相談

境界杭の打ち直し費用を請求できるのは、損害と相手を知った時から3年間ですので(3年で時効になります)、境界杭が抜かれたことに気づき、相手がわかった時点で早めの対処をおすすめします。

熊本県で、境界杭などの問題を抱えながらの土地売却にお悩みの方は、すがコーポレーションへお問い合わせください。

現状を丁寧に確認のうえ、売主さまが最小限の負担で不動産を売却できるようサポートいたします。

境界杭打ち直しの費用相場と流れ

土地家屋調査士のプレートと費用計算を想起させる電卓および虫眼鏡

境界杭の打ち直しにかかる費用は、「打ち直しのみ」「確定測量+打ち直し」どちらが必要かで大きく変動します。

それぞれの費用相場と、境界杭打ち直しの流れを紹介します。

打ち直しのみの費用と流れ

以下のような場合には境界杭の打ち直しのみを実施するのが一般的で、「費用相場は10万円〜30万円程度」、「境界杭設置までの期間は2週間〜1ヶ月程度」です。

【境界杭の打ち直しのみが可能なケース】

  • 地積測量図・地籍図・筆界確認書などの根拠資料がある
  • 隣地所有者と争いがない

【境界杭の打ち直しのみを実施する流れ】

資料調査(法務局の地積測量図・公図、市町村の地籍図の取得)

→現地調査

→事前測量(資料と現況を照合して復元位置を計算)

→隣地所有者との立会い、立会確認書の取り交わし

→復元測量・境界杭の設置と立会い記録の作成

過去に「筆界確認書」を取り交わしている場合には作り直す必要はなく、境界杭を正しい位置に打ち直したことを確認する「立会確認書」で隣地所有者が境界を確認したことを証明でき、後の境界トラブルを防げます。

確定測量まで行う場合の費用と流れ

境界杭の打ち直しにあたって確定測量も必要となるのは以下のような場合で、「費用相場は30〜70万円程度」、「境界杭設置までの期間は1〜3ヶ月」です。

【確定測量も必要となるケース】

  • 地積測量図・地籍図・筆界確認書などの根拠資料がない
  • 資料が古くて精度が低い
  • 買主から確定測量を求められた
  • 土地を分筆して売却する

こちらの記事で、土地売却額をご自身で調べる方法をご確認いただけます。

【確定測量も必要な場合の流れ】

資料調査(法務局の地積測量図・公図、市町村の地籍図の取得)

→現地調査・現況測量

→(道路や水路に接する場合)市町村へ官民境界の立会いを申請

→境界点の案を作成

→隣地所有者との立会い・筆界確認書の取り交わし

→確定測量図の作成

→境界杭の設置

確定測量も必要な場合は、復元測量の工程に加えて、「隣接するすべての土地の所有者との立会いと筆界確認書の取り交わし」「道路や水路に接する場合は道路管理者(市町村など)との官民境界の立会い」「確定測量図の作成」など、工程や関わる人の数が多くなるため、費用が高額で境界杭設置までの期間も長くなります。

境界トラブル防止のために立会いと証明書類は必須|立会いなしの対処法

土地境界の図面を挟んで立会いや協議を行うイメージ模型

土地が単独で存在することはないため、境界の確定には隣地所有者の立会いと、立会いを証明する書類(筆界確認書や立会確認書)は必須です。

また、土地家屋調査士が隣地所有者の確認なしに境界杭を打つことは通常ありません。

とはいえ、隣地所有者の立会いが難しいケースがあることも事実で、その場合には以下のような対処が可能です。

立会いなしの例対処法
隣地所有者が遠方・高齢で立会いできない・図面と確認書を郵送して署名をもらう
・代理人による立会いも可能
隣地の所有者が不明・相続登記がされていない・土地家屋調査士が登記簿・戸籍から相続人を探索
・法務省は令和4年10月から、隣地所有者が不明でも精度の高い地図(地籍調査済み等)があれば、筆界確認書なしで分筆・地積更正の登記を認める運用に見直し済み
隣地が非協力的・拒否している・境界の調査・測量のための隣地への立入りは、民法209条により承諾不要(事前の通知は必要、住家への立入りは承諾が必要)
・ただし署名は強制できないため、法務局の筆界特定制度※を利用
隣地が境界の位置そのものを争っている法務局の筆界特定制度※を利用

※「法務局の筆界特定制度」とは、筆界調査委員(法務局外部の専門家)の意見を踏まえて、法務局の筆界特定登記官が境界の位置を特定する制度のことです。

  • 隣地の同意不要
  • 申請手数料は土地の価格に応じて数千円程度
  • 測量が必要な場合は測量費用が別途
  • 期間は6か月〜1年程度

境界杭の打ち直し費用Q&A

赤い矢印で境界位置を示す金属製の境界標鋲

最後に、境界杭の打ち直し費用について、すがコーポレーションがよくいただく質問・回答をご紹介します。

Q.境界杭の打ち直し費用の折半を求める側の場合、円満に交渉するコツはある?

A.土地家屋調査士同席のうえで、隣地所有者のメリットと法的根拠を示して交渉することをおすすめします。

  • 土地家屋調査士に、中立の立場での説明や隣地所有者からの質問対応をしてもらう
  • 確定測量図と筆界確認書は、隣地所有者が不動産を売却する場合にもそのまま使用できることを伝える
  • 法律で費用の分担が定められていることを伝える
  • 見積もり書を提示し、「境界杭の設置費用」「測量費用」の分担額の根拠を明確に伝える

Q.折半を求められて費用を払うのが難しい場合、どう対処すればいい?

A.今すぐに境界杭の打ち直しが必要な理由をご確認のうえで、「本当にご自身が費用を負担するべきなのか」「求められている分担額が妥当なのか」を判断します。

  • 相手の不動産売却や建物建築のために境界杭の打ち直しや確定測量が必要な場合には、必要とする側が費用を負担するのが通例
  • 測量費用は面積按分なので土地が小さい側の負担は半分より少なくなる
  • 地籍調査が完了している地域なら高額な確定測量が不要な場合がある

杭の設置費用だけを分担する提案も可能ですし、支払いが難しいことを伝えたうえで立会いや署名にスムーズに協力する意思も示すことで、無理な交渉は行われないケースも多数あります。

まとめ

「境界杭の打ち直し費用は誰が払うのか」をスムーズに判断できるよう、状況別の負担者、勝手に境界杭を抜かれた場合の対処法、境界杭設置までの流れなどを詳しくご紹介してきました。

結論として、境界杭の打ち直し費用は「境界杭が抜けるなどの原因を作った人」がいればその行為者、いなければ「必要としている人」が払うのが基本です。

勝手に境界杭が抜かれた場合やご自身で境界杭を抜いてしまった場合は、触れずに現状の記録をして専門家へ対処をご依頼ください。

境界杭は目立つ存在ではありませんが、ご自身・隣地所有者にとって大切な財産を守る重要な印です。

熊本県で境界などの問題を抱えながらの不動産売却にお悩みの方は、すがコーポレーションへお問い合わせください。

各専門家と連携して、売主さまが手間なく不動産を売却できるようにサポートいたします。