不動産売却の際にぜひ考えていただきたいのが、「減価償却」です。
減価償却とは、建物が経年劣化することを踏まえた、価値の減少の手続きです。
一見、資産価値の低下というネガティブなイメージを持たれますが、建物の売却時に譲与所得税を節税できるメリットもあります。
減価償却の基礎知識から計算できるよう計算式もご紹介しておりますので、計上の際は参考にしてみてくださいね。
□ 減価償却とは
「減価償却」とは、建物や車両などの価値を減少させる手続きです。
これらのものは購入して使い始めると、どんなに丁寧に扱っていたとしても、経年劣化を避けられません。
そのため、時間が過ぎれば過ぎるほど、劣化によって建物や車両としての価値が下がっていくのです。
この下がり続ける価値を踏まえて、家の会計をすることを「減価償却」と呼ぶのです。
ただし、同じ不動産でも土地は減価償却の対象にはなりません。
なぜなら、土地は劣化しないためです。
戸建てを減価償却する際は、建物部分の購入価格のみで計算しましょう。
戸建ての住宅で算出した減価償却はいつ利用するのでしょうか。
事業用でない戸建ての減価償却は、売却した時の譲与所得の計算に必要です。
売却時の価値は、取得時よりも経年劣化により下がります。
そのため、取得した時の価格 – 減価償却費で計算しましょう。
ちなみに、減価償却には、国税庁が定めたルールがあり、実際の劣化具合とは関係ありません。
減価償却は「耐用年数」と「償却率」によって求められます。
「耐用年数」には3種類ありますが、減価償却に使われるのは法定耐用年数です。
様々な耐用年数の意味は以下の通りです。
・物理的耐用年数
構造や材質が物理的に耐えられなくなる年数です。
建物の劣化具合を考慮した考え方になります。
・経済的耐用年数
その建物が経済的な価値を持つ期間です。
物理的耐用年数に加え、今後の修繕や補修の費用と効果も加味して算定されます。
・法定耐用年数
減価償却に使われる耐用年数です。
国による不動産の価値を公平に計算するために作られた基準で、不動産の種類、構造、用途により、一律に定められています。
法定耐用年数の期間と建物の価値の減り具合を表す償却率は建物の材質と構造によって、国税庁がその値を決めています。
例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造りまたは鉄筋コンクリート造りの建物は、非業務用耐用年数が70年、非業務用償却率は0.015%になります。
□家の減価償却の計算方法
では、減価償却はどのように計算すればよいのでしょうか。
大まかにいうと、不動産にかかる減価償却費は「取得費×償却率」で算出できます。
この計算には以下の値が必要です。
・建築取得費
・建物と土地の割合
・物件の耐用年数
・償却率
例として、1億円の中古一戸建て(築10年)を売却する場合の計算方法についてみていきましょう。
この戸建ては鉄筋コンクリート(耐用年数47年)で築年数10年程です。
また、売買契約書には、土地代5000万円、戸建て代5000万円と記されています。
まずは、耐用年数を求めましょう。
計算式は、「(耐用年数-経過年数)+経過年数×20パーセント=耐用年数」です。
数字を当てはめると、(47年(耐用年数)-10年(築年数))+2年(築年数10年×20パーセント)=39年になります。
建物の耐用年数は39年と分かりました。
この耐用年数をもとに「減価償却資産の償却率表」を見て、償却率を調べます。
償却率は0.026ですので、「取得費×償却率」を計算して、減価償却費を算出しましょう。
戸建て代5000万円×償却率0.026=年間130万円となりました。
この戸建ての減価償却費は年間130万円と計算できましたね。
□減価償却の節税面でのメリット
減価償却費は戸建てやマンションなどを売却した際の計算に用いられる項目の一つです。
この減価償却費は不動産を売却した際にかかる譲与所得税を節税するのに一役買ってくれるのです。
譲与所得は、譲渡価格から所得費と譲渡費用を引いたものです。
つまり、所得費や譲渡費用が増えれば、譲与所得を引き下げられるというわけですね。
では、取得費はどのように計算するのでしょうか。
取得費の計算式は、「取得費=不動産の取得費用+取得にかかった費用-減価償却費相当額」で表されます。
また、所得にかかった経費とは、不動産の購入に必要な仲介手数料や印紙税を指します。
減価償却費は不動産売却にかかった費用の一部として取得費に増やせます。
このように、取得費が増えることで譲与所得を引き下げられるのです。
譲与所得税は譲与所得に対して課税されます。
結果的に譲与所得を下げることにつながるため、減価償却費を経費として計上しておきましょう。
□まとめ
減価償却とは、建物が経年劣化することを踏まえた、価値の減少の手続きでした。
法定耐用年数からわかる減価償却率を用いて計算します。
また、建物の売却時に譲与所得税を使い、節税できるメリットもあります。
熊本市周辺で不動産売却にお悩みの際は、ぜひご気軽にご相談ください。